最高の天気の下、いい感じに汗をかきながら快調に国道138号を飛ばしていました。 「激坂」あざみラインの疲れも思ったより残っていないように思え、心無しか脚もよく回る! あとで振り返れば、国道138号の山中湖から河口湖IC方面に向かっていくこの区間、緩やかな下り基調だったんですよね…。 あざみラインをクリアした高揚感も手伝って、その時、僕は完全に調子に乗ってしまっていました。 そして気が付けば富士急ハイランドを右手に見ながら河口湖ICを過ぎ、「富士スバルライン」の立体交差を左折していたのです。 かのビッグイベント、「Mt.富士ヒルクライム」の舞台、富士スバルライン! 富士スバルラインのスペックは… 全長25㎞、標高差1,270m、平均勾配5.2%、最大勾配7.8%。 対するふじあざみラインは… 全長11.2㎞、標高差1,160m、平均勾配10.4%、そして最大勾配20%以上。 そんな予備知識だけは頭に入っていた僕は、完全にナメてました。 「あざみラインを楽しめたんだから、なだらかなスバルラインはサイクリング気分で楽勝で走破出来るんじゃないか!?」 そしてそれが大きな間違いであることを、この後嫌というほど思い知らされることになるのです…。 国道を左折してスバルラインに入ると、上り基調の直線路になりました。 やはり人気の道なのか、サイクリストこそ他にいませんでしたが、上っていくバスやマイカーの量はあざみラインの倍以上。 まだ「上り」とも言えないようなゆるやかな斜度の道を、車の列とともに快調に飛ばします。 メロディーポイントを過ぎても、延々となだらかな直線状の上り。 ここで少々「アレ…」と感じていました。 思ったより長く、そして、とても単調なのです…。 「いやこれ、意外とキツいな…。早く料金所に出ないかな…」 つづら折りや激坂は瞬間的にはキツいけど、「景色の変化」や「刺激」があります。 しかし、あざみラインの前半もそうでしたし、例えばハルヒルコースや赤城山ヒルクライムの前半部にも現れる直線状のなだからな坂って、実は意外とキツいんです…というか、精神的にけっこう辛かったりするんですよね。 しかもスバルラインの導入部はこれでもかというほどずっと同じ景色が続くので、これがけっこう精神的にくる…。 それでも、料金所を過ぎればまた景色も変わるんだろうと思いつつ、ひたすらこの直線路を上っていきました。 どれくらい走ったでしょうか。 おそらく大した距離ではなかったはずですが、とてもとても長く感じました。 そしてようやく料金所に到達。 たくさんの車の列に混じって並び、通行料金の200円を支払います。 本物の富士ヒルでは、ここが計測開始地点になるんですよね。 ようやく訪れた「変化」に息を吹き返し、気を取り直して「ひとり富士ヒル」のスタートです。 しかしそれは、「地獄」の始まりでした。 僕のとっての「魔界」の入口はあざみラインの方ではなく、実はこちらだったのです…。 今まで色々なところにヒルクライムを楽しみに行きましたが、おそらく、今までで一番「辛く苦しい」ヒルクライムになりました。 上の写真の景色が、とにかく延々と続くのです…。 えっ? 斜度はゆるやかなんだから、そんなに辛くはないんじゃないかって? それに、青い空に緑の木々が綺麗じゃないかって…? 確かに、斜度は3%か、せいぜい5%くらいでしょう。 道の両脇に続く綺麗に手入れされたかのような林も、確かに綺麗ではあります。 しかし、「景色が変わらない」ということがこれほど精神的に「くる」とは、思いも寄らなかったのです。 そして、その「辛さ」を増幅させるアイテムが道端に連続して現れます。 そうです。ありがたいことに、「五合目まであと何キロ」という表示が、非常〜に細かく細かく現れるのです(苦笑)。 嫌がおうにもその数字が目に入るので、これが精神的にキツいのなんの…。 残り20㎞以下になるまでが、本当に長い! 憧れだった富士スバルラインのヒルクライムが、まさかこんなにキツいヒルクライムになるとは、予想だにしませんでした…。 トラップはまだまだ仕掛けられていました。 「よし、とりあえず一合目だ!」とホっと一息着いた駐車場。 念のためトイレを済ませ、ベンチで少々休憩してから張り切って再スタートすると、ほどなくしてまた看板が。 あれ、もう二合目?(喜) いやいや、そこには「一合目」の文字。 そうです。さきほどの駐車場は一合目「下」駐車場だったのです…。 まだ一合目かい!!! いや冗談抜きで、これにはマジで心が折れかけ写真を撮る気力もなし…。 ガックリと肩を落として、また代わり映えのしない景色の中を上り始めました。 いったいどうしたんでしょう。 斜度自体は相変わらず5%前後と大したことはないものの、とにかくバイクが前に進みません。 このくらいの斜度でこんなに進まないのは、初めてかも。 あざみラインの激坂や山中湖から国道を飛ばしてくる時にはあれほど軽快に回せていた脚も、鉛のように重く感じられるようになっていました…。 なんだろう、この「重さ」…。 うどんも食べてきたし、まだお腹も空いていません。ハンガーノックなどではないはず。 水分もちゃんと摂っている。 呼吸だって大丈夫。 でも、とにかく体が、脚が重いのです。 これは間違いなく、精神的なものだな…。 単調な景色の中では、いやがおうにも自分自身と深く向き合うことになります。 そして、はっきりと分かりました。 絶対的に精神力が弱いんだということを…。 「何をおおげさな」…と思われるかもしれません。 でも、それはどうしようもない「事実」でした。 そして、はっきりと分かったのです。 なぜロングライドが苦手なのか。 たいして体力も脚力もないくせに、なぜ「激坂」が好きなのか。 淡々と自分と向き合う「精神力」こそが、僕には決定的に不足しているからなのです。 長い長いスバルライン前半部の単調な上りで、僕はそのことを目の前に突きつけられました。 そうなるともうダメです。 おそらく体の奥底にたまっていたであろうあざみラインと籠坂峠のダメージが、一気に吹き出してきました。 ついさっきは信じられないような激坂を笑いながら上りきってしまえたはずなのに、信じられないようなこの緩やかな直線状の坂で、僕は脚を付いてバイクを押していました。 つらい…。なんてつらいんだろう…。 完全にナメていました。 脚も呼吸も大丈夫なはずなのに、ただただ「つらい」というだけでペダルを回すことが出来なくなってしまったのです。 こんななだらかな坂でバイクを押し歩いている! 情けなさとふがいなさで、涙が出そうでした。 「五合目まで16㎞」の表示のところで、完全にストップ。 かろうじて写真を撮った後、しばし動けなくなっていました。 この時僕は、本気でこう思っていました。 「ここで折り返せば、どんなに楽だろう…」 きびすを返せば、一転、そこにはなだらかな下りが待っています。 ペダルを回さずともスイーっと進む「天国」が待っているのです。 別にスバルラインを上らなければいけない義務はないじゃないか。 そして、どこかで美味しいものを食べてのんびり道の駅まで帰ればいいじゃないか…。 DNF…DNF…DNF この三文字が頭の中をグルグルと駆け巡っていました。 〈つづく〉
by pcblue
| 2015-09-08 21:47
| ヒルクライム
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Comments(8)
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勇者
at 2015-09-08 23:51
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pcblueさん こんばんは。
自転車ブログでまたに見かけるオカワリをしてしまったんですね!富士山で…。凄い!!! まだ一合目かい!!ちょっとウケました。 確か登山道にも同じ様に新◯◯合目の表示があった様な…。 私も先日100キロチャレンジした帰り道、江戸川の海から◯◯キロの看板に心をポッキリ折られました…。元気な時は親切な看板なんですけどね。 横たわってるpcblue号がpcblueさん見えるのは私だけでしょうか…。
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leblanc_blue at 2015-09-09 16:52
いや〜、きついですね。(苦笑)
私は1度ハンガーノックになりながらも30km程の距離を何度も休みながら帰宅した苦い経験があります。(^ ^) ただ、それ以降のロングライドなどはこの苦い経験があったおかげで、どんな体調でも自宅まで帰れる自信がつきました。 pcblueさんも、今後のヒルクライムを楽しむうえで貴重な財産になると思いますよ〜。(^-^)/
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pcblue at 2015-09-09 18:25
♪勇者さん♪
一合目「下」駐車場…。たぶん一生忘れないと思います(苦笑)。そしてキロポスト表示、なかなか心が折れました…。 横たわっているpcblue号の写真、自分でもよくこの時の心象が表れていると思います(汗)。
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pcblue at 2015-09-09 18:27
♪Tomyさん♪
はい、あざみ走破で調子に乗って行ってしまいました。 なだらかな坂がこんなに辛かったのは初めてです。基礎体力&精神力が全然ダメダメした…。 激坂は大好きなので、おそらくドMで間違いないかと(爆)。
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pcblue at 2015-09-09 18:30
♪ルブランクさん♪
予定ではかる〜くスバルラインを走破して、山中湖畔に戻ってオシャレなカフェで…という感じだったんですけどね。自分でも情けないくらい上れませんでした。。。 でもやっぱり自転車は最高ですっ(笑)。
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pcblue at 2015-09-09 18:32
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by pcblue カテゴリ
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