なんだかんだで楽しめた三峰神社を出て、本日最後の上りを堪能した後は… 三峰トンネルを抜け、いよいよ秩父の街へ向けてのダウンヒルがスタートです。 「ああ、もうすぐ楽しい1日も終わっちゃうんだなぁ…」 ちょっとセンチメンタルな気分に浸りながらも下り基調のトンネルを抜けると、そこにはやはり、極上のロケーションが待っていたのでした。 「いやぁ、この道も凄いですね!」 思わず前を走るT.Aさんに向かって叫ぶ僕。 風の音でT.Aさんの声は聞こえなくても、「ウンウン」とうなづくヘルメットを後ろ見れば何を言っているかは分かりました。 そして、目前に広がる大パノラマに驚くのです。 いったい今日は、どれだけ素晴らしい景色を堪能させてくれるというのでしょう! 風の谷だ…。 巨大な谷を見下ろしながら走るトロッコ電車のごときダウンヒルに、もう言葉もありません…。 カーブをひとつ超えるたびに減っていく色彩と濃くなっていく緑に一抹の寂しさを感じながらも、ゆっくりゆっくり高度を下げていきます。 先を行くT.Aさんが林間を駆け抜ける様子を写真に収め、また追いかける…。 たったそれだけのことがもうとにかく楽しくて、子供のように興奮しながらペダルを回していました。 ワイルドな滝が現れたかと思うと、突如、遠くに巨大な紅葉の山が! 本物はこんなんじゃない。 もっともっと足がすくむほど綺麗なのに、カメラに収めると、どうしても陳腐になってしまう…。 1枚撮るたびに「くそ〜! こんなんじゃないのに! うまく撮れない!」…と怒る僕を苦笑いしつつ見つめるT.Aさん…(笑)。 そんな至福のダウンヒルも、いよいよ終わりが近付き… 大血川にかかる橋の上で停まって写真を撮った後、道は大きな幹線道路に合流。秩父の街へとつながる国道140号線です。 車と並走しながら、ライドの終わりを噛みしめる僕。 本当に楽しかった…。こんな絶景尽くしのライド、もう二度とないかもな…。 そんなことを考えながら、前を走るT.Aさんの背中を必死で追いかけました。 やがてT.Aさんの合図で右手に逸れて、三峰口駅のトイレへ。 味のある駅の風景をバックに少し休憩して、いよいよ本当にライドは終盤へ…。 傾き始めた太陽光線に照らし出されるT.Aさんのマドンのカーボンスモーク模様。 ロードバイクって、本当にカッコいいな…。 秩父の街へは、交通量の多い国道140号線を避けて細めの道を軽快に走るT.Aさんの背中を追いかけます。 時折現れるアップダウンやプチクライムに二人で「ヴォーーー」と雄叫び(笑)。 ここで僕ははっきりと気づきました。 「どうして二人サイクリングはこんなに楽しいのだろう?」と、今日ずっと考え続けてきた問いに、ついに答えが出たのです。 二人で一緒に走る…といっても、終始おしゃべりしながら走るわけではありません。 いや、ほとんど無言のまま、ただ縦に並んで走っているだけですよね。 じゃあなんで、こんなに楽しいの? 黙って走っているだけだったら、二人も一人も同じなんじゃないの? 違うんですよね。 やっぱり二人は一人より何倍も楽しいんです。 ではそれはなぜか? ちょっとした上り坂に「ヴォーーー」と叫び… 最高の景色にまた「ヴォーーー」、爽快なダウンヒルに「ヴォーーー」… そうです。 「ウォーーー」ではなく、「ヴォーーー」なんです。 二人の声が重なって「ウ」が「ヴ」になるだけで、ただそれだけで、こんなにも楽しいのです!!! ライドの最後、街中のプチクライムで二人の叫び声が重なった「ヴォーーー」に、僕ははっきりとそれを確信しました。 気がつくと秩父の街の中心部まで戻ってきていました。 まるで葛飾・柴又のような街並みに、「これまた昼間とのギャップが凄いですね」と顔を見合わせて笑う二人。 網の目のような路地裏を、スイスイと走る…。これもまた、自転車の醍醐味でしょう。 結婚式? お祭り? 舞妓さんのような格好をした女性の周りに、見物のひとだかりが出来ていました。 その様子を二人でしばし眺めた後… 「お昼ご飯が早かったから、なんだかお腹が空きましたね」と僕。 「ですね。何か食べましょうか」とT.Aさん。 たまたま足元にラーメン屋の小さな看板と地図。 「じゃ、ここに行ってみますか」と即決。 そのお店は秩父神社のすぐ横の路地裏にありました。 時刻も16時前と中途半端だったせいか、お客さんはゼロ。 少々の不安の中、けっこう待たされて出てきたラーメンは… いかにも職人器質的な雰囲気の若いご主人が時間をかけて作ったラーメンは、とてもこだわりを感じさせる麺、チャーシュー、メンマ、タマゴ、ネギ、スープ…と全てが完璧な美味さ! 思わず二人で顔を見合わせて「ヴォーーー!」…ではなく、「美味い!」(笑)。 ライドの最後に最高に美味いラーメンを食べながら、自転車談義に花を咲かせる。 果たして人生にこれ以上の幸せがあるのでしょうか。 二人ともスープまで飲み干し、「ヴハーっ!」(笑)。 いやほんと、本当に美味しかったですよご主人。参りました。 「お気をつけてどうぞ!」 ご主人に見送られてお店を出ると、やはりすぐ横の秩父神社で何かお祭りでもあったのでしょうか、駅方面に向かう車がものすごい大渋滞。 その横を申し訳なさそうにゆっくりとすり抜け、踏切を渡れば、目と鼻の先がスタート地点の「道の駅ちちぶ」でした。 「いやぁ、本当にすごいライドでしたね。最後のラーメンがまた最高でした!」 「ですね。自分でルートを作っておいて、これほど楽しめるとは思いませんでした。pcblueさんとのライドはこれで2回とも非常に濃すぎるので、次回はどうなってしまうんでしょうね(笑)」 「いやいや、もうこうなったら来年は渋峠か乗鞍しかないんじゃないですか⁉︎」 車の前で、いつまでもそんなことを話し続ける二人。 年齢も、生きている環境も境遇も全てが異なる他人どうしが、こうしてひとつの「点」で交わり、語り、笑い、自転車で山の中を駆け巡る不思議。 走行距離120㎞。獲得標高2000m超。 いや、そんな数字は「どうでもいい」と思えるほど、もうとにかく理屈抜きで楽しかった! いつかまたこんなに楽しい日が来るかもしれないと思えば、きっとどんなにつらい仕事や人生の困難にも立ち向かえるーーーーーーーーーーーーー。 心からそう思えるような大切な思い出がまたひとつ、ロードバイクに出会ったおかげで、またひとつ…。 こうしてどうしようもなく心が打ち震え続けた最高のライドは、穏やかな夕方の空気の中で静かに終わりを迎えたのでした。 〜エピローグ〜 道の駅ちちぶでT.Aさんと別れた僕は、ハンドルを握り、一路、国道299号へ。 朝からしっかり食べたせいか、はたまた少しは強くなったのか…⁉︎ 去年はアクセルを踏むのもつらいほど攣った右脚が痛かったのに、今年は何ともない! 「やっぱりちゃんとした補給は大切だな。今度ショップに行って真剣にアドバイスしてくれた店長にお礼言わなくちゃ」 一人悦に入りながら、そして今日のライドを頭の中で復唱しながら、夜の国道を鼻歌交じりで快走します。 『楽しむために、もう少しだけ強くなろう』 「強い人」との圧倒的な違いを体感し、自分の弱さに絶望し、そう誓ったあの日から1年ーーーーーーーーーーー。 今回はほぼ同じ距離、同じ標高差を走っても攣らなかった右脚を褒めながら、アクセルを吹かし…。 別にトレーニングに励んできたわけでもないし、これからもそんな乗り方をするつもりもないけど、やっぱり今日1日、楽しみながらT.Aさんにちゃんと付いていけたことがすごく嬉しくて…。 ロードバイクってほんと、最高だなぁと思うのです。 そうそう。 ライド前日に慌てて原宿の某店(もうボトルなんかでバレバレですね/苦笑)に電車で突撃して購入したブツとは、ビブショーツでした。 それも、夏用のビブではなく、厚手の生地で出来た冬用の「サーマルビブ」というヤツ。 これが大正解で、いつも峠攻めでは下りでお腹を冷やして…(以下自粛)となりやすい僕ですが、下半身が終始暖かくて、ニーウォーマーとの組み合わせは上りでもオーバーヒートすることなく、とても快適でした。終始お腹の調子が良く、心おきなくしっかり補給できたのも、このサーマルビブのおかげかな。これからは秋と春の定番になりそうです。 そんな「原宿の某店」に行くきかっけになったのも、去年のT.Aさんとのライドだったんだよなぁ〜。 せめて服装だけでも憧れのライダーに近づけたら…なんてね(笑)。 対して上半身は薄手の長袖ジャージにジレの組み合わせ…と最初に書きましたが、上りはジレを取るくらい暑かったのですが、中津峡の下りなどでは、逆にジレだけではかなり寒かったです。 寒がりな自分は、やはりこの時期でもウィンドブレーカー系の方がいいような気がしました。備忘録として。 服装は難しいですね。でも、それもまた、ロードバイクの楽しさのひとつには違いないのですが…。 川越ICから関越道に入ると、行楽帰りの車で大渋滞。 たまらずSAに飛び込んでシートを倒すと、あっという間に夢の中へ…。足は攣ってなかったけど、やっぱり疲れてたんですね。 目が覚めた頃には渋滞は解消していて、頭もスッキリ。夜の快適なドライブで、無事自宅へと帰り着きました。 『でもやっぱりね、あの平地でも上りでもまったくブレない背中が凄いんだよなぁ』 T.Aさんは「あんまり持ち上げないでくださいよ〜」なんて言ってたけど、勝手に尊敬するのは自由ですから! もしもまたT.Aさんと走れる機会があったら、驚かれるくらい強くなってる…のはたぶん無理だから(苦笑)、今よりもっともっとロードバイクを楽しんでいる自分を見ていただけるように、これからもマイペースで楽しんでいこうと思います。 それが、こんな自分に付き合ってくれたT.Aさんへの最高の恩返し…ですよね、きっと。 にほんブログ村
by pcblue
| 2015-10-30 06:24
| ヒルクライム
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Comments(10)
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leblanc_blue at 2015-10-30 15:29
う〜ん、楽しいときは必ず終わってしまう…切ないようですがだからこそより深く心に刻まれるのかもしれませんね❗️
2人で乗ると楽しいですよね。会話はなくとも気持ちが完璧にシンクロするのがわかるんですよね〜、ヴォー、ですか、確かにそんな感じですよね。 それにしても見ているだけで涙が出てくるような景色ですね❗️あと、文章がまたいい💦 写真も文章もつたないですが、僕もブログ続けますので、よろしくお願いします❗️ ジャパンカップに続き、いいところに行ってきたんですよ😁
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pcblue at 2015-10-30 19:52
♪ルブランクさん♪
終わってしまうからこそ楽しいのかもしれませんね。でもほんと、楽しかった…。 同じ景色や感動を分かち合える人がすぐ近くにいるって、すごくいいですよね。T.Aさんは年上ですし、「仲間」…というには失礼かもしれませんが、素敵な自転車仲間とのライドは最高でした。 ジャパンカップの記事、カンチェのサービス精神には驚きました! ルブランクさんの行動力にも(笑)。 また楽しいブログを期待してますね!
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pcblue at 2015-10-30 19:55
♪けん坊さん♪
いやもう、最高のロケーションで、正直、とても驚きました。 もう少し冷静でいられたら、もっといい写真も撮れたのかも…と思うほど、興奮してしまいましたよ。あの感動がなんとか伝わったなら嬉しいです。 T.Aさんはすごく僕と違ってすごく自然体で大人なので、一緒にいて心地いいんですよね〜。
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minozou2 at 2015-10-30 20:53
お疲れ様でした!奥秩父絶景紅葉ライド・・・いやぁ濃厚デートでかな。
すんごい絶景、素晴らしい写真で感動・感動でした! 埼玉生れ埼玉育ちのボクですが埼玉のお山を走ったこと無くあまり興味も無かったのですが 今回のライドの記事でちょっと埼玉のお山のお勉強して来年は色々走ってみたいな。 そして少しでもあんな写真が撮れるようになりたい。。。
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pcblue at 2015-10-30 21:29
♪minozouさん♪
最高のデートでしたよ〜(笑)。 よく考えたら埼玉県って凄く広いですよね。すぐ近くの三郷だって埼玉県ですもんね。いや、でも奥秩父は凄かったです…。 そして今回、写真に関してはちょっとショックを受けて帰ってきました。終始「本物」のスケールに圧倒されっぱなしで、自分で「これだ!」と思える納得のいく写真がまったく撮れなかったのです。まだまだスキルも経験も足りないなぁ、と。だから一緒にいろいろ勉強していきましょう!
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tokyo_terry at 2015-10-30 22:32
pcblueさん、こんばんは!
今夜もしっかりと写真と読み応えのあるエントリー拝読させてもらいました。 風景に感動したり、ライドに感動したり、食事に感動したり 友人を尊敬しながらも一緒に走りを楽しめるなんて、最高の休日ですね。 これぞオトナの休日ですかね。 ヒルクライムを含め走行距離や獲得標高もかなりのものですが シャッターも相当切られた様子で、現像処理にも 相当時間が掛かったんじゃないでしょうか?(笑) でも、家に戻ってからも写真の現像しながら、その日1日を反芻できるので それもまた楽しかったりするんですよね。 ロングライド&ロングエントリー、お疲れさまでした!(笑)
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pcblue at 2015-10-31 21:03
♪terryさん♪
こんばんは! 長くなってしまい、申し訳ございません(汗)。 今回のライドは去年以上に楽しくて、ただただ感動致しました。自分へのご褒美に、年に1度くらいはいいですよね(汗)。 写真はまさに最後の駐車場のカットを撮り終えたところでバッテリー切れ…という感じで、終盤はハラハラしながら慎重に撮ってました。M2は一度バッテリーが無くなると、もう抜き差ししてもうんともすんとも言わなくなるので…。ヒヤヒヤでしたよ。今度はバッテリーの予備も必要かも⁉︎ 現像も苦労しましたが、その作業もまた、写真の楽しみですよね♪ 最近はLRだけでなくDPP4も使い始めたので、もうシッチャカメッチャカです(苦笑)。
最近はすっかり山にはまってますね〜 登れる脚力があって羨ましい!
いつかは秩父もチャレンジしてみたいところですが、なかなかねえ。。。 それにしても腕がいいのか、カメラがいいのか、とにかく写真がきれいです。 来年こそはこんな景色が見られるならチャレンジしてみるかな? と思わせるだけの写真ですよ!
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pcblue at 2015-11-04 21:49
♪Tomyさん♪
こんばんは! 確かに以前より坂には慣れたかもしれませんが、相変わらず遅いんですよ〜。足付きっぱなしですし。 坂が好きというよりは、山でのサイクリングは好きなんだと思います。 想像するに、おそらくTomyさんの脚力ならば絶対余裕ですよ。ぜひチャレンジしてみてください! 山でご一緒出来たらもう最高なんですが(笑)。
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