挑戦。ひとり富士ヒル! その7

ゴールの五号目までまだあと16㎞という序盤で、完全に立ち止まってしまった僕。

「DNF」の言葉がグルグルと頭の中を回り、なかなか走り出せずにいました。




しばらくその場で立ち尽くしていましたが、ふと我に返り、「さすがにこんなところで引き返したら、あとですっごく後悔しそうだよな」と思い直し、どうにかバイクにまたがりました。

その時に右足を振り上げるのさえ億劫なほど、体中の力が抜けていました。









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相変わらず単調な景色…。

つらい。本当につらい…。

脚が攣っているわけでもないし、ましてやハンガーノックになっているわけでもないのに、こんなにつらいヒルクライム、初めてだ…。





やっぱり引き返そうか…。





何度もそう思っては、心が折れかけました。






カメのような速度でどうにか二合目をパス。

すると、徐々に待望のカーブが出てきました。



不思議なもので、カーブになると斜度自体が上がっているはずなんですが、直線状の上りより、精神的にかなり楽。

前に進む気力が少しだけ湧いてきました。






それでもやはり、つらいことには変わりはありません。

気力だけでゆっくりとペダルを回して行きます。








代わり映えのしない景色が、異常に遅い速度で後ろに流れていきます。








いつの間にか青空も消え、頭上は雲で覆われていました。

幸い雨が降ることはなかったのですが、今にも降り出しそうな黒い雲。そうかと思うと、突然雲が切れて青空が顔を出したり…。

山の天気は本当に変わりやすいなぁなんて思いつつ、空が黒くなると、また精神的なつらさが頭をもたげてきます。







何か…、何か「ニンジン」はなかったっけ…







まだまだ遥か先に感じられる五合目に、無事辿り着けたら…?












そうだ! 確か富士山の形をしたメロンパンがあるんじゃなかったっけ!?












本当にくだらない「ニンジン」ですが、メロンパンのことを思い出したら、なんか元気が出てきました。

よし、どんなに時間がかかっても、歩いてでも五合目に辿り着いて、あのメロンパンを大人買いして2コ食べてやる〜!(爆)










「メロンパン…メロンパン…」








何かに取り憑かれたかのようにブツブツと唱えながら、ゆっくりゆっくり、もちろん28T全開で前に進んでいきました。













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やがて右側に「樹海台駐車場」の看板が目に飛び込んできました。

もちろん迷わずそこで休憩です。








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ここまでずーっと変わり映えのしない林間の景色だったので、開けた景色に心が癒されます。





ああ、これでもう少し上れる…。





そうか。どんなに遅くたって、どんなに休憩したって、時には歩いたって、上に向かって進んでいる限りは必ずゴールに近づいているんだ。

そんな当たり前のことが、実はヒルクライム最大の醍醐味だったじゃないか?






ついさっきまでは本気で引き返すことを考えていた僕ですが、やっぱりあそこで心折れなくてよかった…。







よし、五合目まで上ってメロンパン食べるぞ!!!










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ワインディングの途中で「三合目」の看板をパス。

これでまた気力がさらに増して、心無しか脚も軽くなったような気がしました。







しかしここでひとつ、大きな問題が勃発。








「メロンパン」を思い描きながら気力を振り絞っていたら、猛烈にお腹が空いてきてしまったのです(爆)。








そういえば、道の駅すばしりで食べたうどん、けっこう量が少なかったな…。






痛恨のミス。

調子に乗って駆け抜けてしまった国道138号、道端にいくつもあったコンビニで、補給食のひとつも買ってくるべきでした。




「失敗した…」




お腹が空き始め、そして、バックポケットに何も食べるものもないと分かった時、再び脚が重くなり始めました。


気が付けばボトルの水も空っぽでした…。












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お腹が空くと、膨らみ始めていた気力がまた急速に萎んでいくのが自分でもはっきりと分かりました。

ほどなくして再び右側に小さな駐車スペースを見つけ、そこに飛び込みます。

木にpcblue号を立て掛けてヘタり込んでいると、一台の車がすぐ横に止まり、運転席から登山者らしい御仁が下りてきました。




「大丈夫!?」




けっこうヤバい感じに見えたのでしょうか。

その方は心配そうに優しく声を掛けて下さいました。






「これを自転車で上るんでしょ? そりゃつらいよねぇ(苦笑)」


「やっぱりこういうのってママチャリとは違うんでしょ? ほらこれ、ホイールだってカーボンだもんねぇ」








その方はpcblue号に興味津々で、しばし質問攻めに遭います。

本当は口を開くのもつらかったんですが、それでも、会話をしていると気が紛れてくるから不思議です。






今日は本当に「人」に助けられます。






「がんばってね」





小さな、しかし温かい声援に送り出され、再び「上」を目指して走り始めました。









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こんな景色がひたすら続きます。

さすがにもう半分以上はきてるはず。

ここまできたらもう、這ってでも五合目まで上ってやる!

そんな気力だけでペダルに体中の力を叩き付けるようにして、ゆっくりゆっくり前進します。






しかし…





今度はいよいよ空腹がピークを迎えてしまっていました。

グゥウウウウ…

富士の中腹で情けなく鳴り響くお腹の音に、ささやかな気力があっという間に削がれていきます…。




ダメだ……




僕は再び脚を付いて、バイク押し歩いてしまっていました。





メロンパン…メロンパン…





不気味に呟きながらバイクを押していると、けっこうな斜度がある、大きなヘアピンカーブに差し掛かりました。

万事休す。もう引き返すしかないか…。




そう観念したその時、目の前に人工的な建物が見えたのです。




まるで雪山で遭難し(したことないけど)、吹雪の中で諦めかけたその時、目の前に山小屋が現れたかのような…









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大きな駐車場と、展望台と、そして、「大沢売店」。





オオサワバイテン。





この素晴らしい響きを、僕は一生忘れることはないでしょう…(涙)。






最後の力を振り絞って5段ほどある店前の階段をpcblue号を担いで一気に駆け上がり、売店の扉を開けて…








「すいません、何か食べるものありますか!?」








中は小さなイートスペースがある売店。よほど僕の形相が凄かったのか、カウンターの中でおばさまがギョっとしてこちらを振り返りました。





「あ、はい、メニューはあちらですよ」





頭上右側にフードメニューが。





『焼きトウモロコシ カレーパン 肉巻きおにぎり』





もちろん…


肉巻きおにぎり!!!(&赤コーラ)











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【う、うめぇ…】










おそらくこの時は、何を食べても世界三大珍味ばりに美味しかったことでしょう…。


肉巻きおにぎり、最高だよ、おまえ…(ちょっとパサついてたけど)。






お皿の上の2コの肉巻きおにぎりは、一瞬でなくなっていました。

そして、赤コーラをゴキュゴキュ。こちらも一瞬で空に。






快く店内にpcblue号を置かせてくれた店員のおばさま…いや、おねえさま、本当にありがとうございました!









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小さな売店の中は暖房が効いていたのか、とても暖かく、体を冷やすことなく食事と休憩をとることが出来ました。

冗談抜きで、ここがなかったら本当にダメだったかもしれません。





おばさま…もといおねえさまに何度もお礼を言って、売店の外に繰り出しました。



よし、走ろう!









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残りは6㎞。

勾配もグっと緩くなり、食事&休憩のおかげか、体も軽く感じられるようになっていました。


距離的にも、あと不動峠一本とちょっと(笑)。




勾配ではなく、「残りあと6㎞」という事実が、僕の背中を大きく後押ししました。「残り20㎞以上」からなかなか進まなかった序盤を思えば、もう天国です。




空気もだいぶヒンヤリとしてきていましたが、幸運なことに「寒い」というほどではありません。

脚も攣ってないし、膝も痛くなっていない。

お腹も満たされた。



よし、いける!







一気に五合目まで駆け上がって、デザート代わりにメロンパンだ!



〈つづく〉










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by pcblue | 2015-09-09 21:52 | ヒルクライム | Comments(0)
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