2013紅葉ライド第一弾 最終話 〜奇跡のダウンヒル〜

南軽井沢交差点の焼肉屋前で動けなくなった僕。
歩道に座り込み、不自然に脚を伸ばす仮面ライダーに、信号で止まる車も興味津々…。

「まいったな…。焼肉屋で休むか? でも、焼肉は食べれないよなぁ…」

なぜか冷静にそんなことを考えていました。

とにかく、少しでも脚を動かすと「グリッ!」です。

じっと動かさないようにして、しばし流れる車を眺めていました。




どのくらい経ったでしょうか。

そおっと立ち上がってみると、なんとか脚は攣らずに立てます。


「さあどうしよう。ショッピングセンターまで戻るか、それとも進むか…」


いずれにしても、このままここに居続けるわけにはいきません。
最悪は軽井沢に泊まる?
いやいや、明日は早朝から大事な仕事が入ってるじゃないか。

自業自得。
調子に乗って飲まず食わずで無理をするからこういうことになるのです。
自分で自分を呪います。


「よし、帰れるところまで帰ろう!」


そう決意し、再び自転車にまたがって恐る恐る漕ぎ進んでみました。



「グリッ!!!」



300mほど進んだところで、あえなく両足が痙攣。

激痛が走り、また動けなくなってしまいました。


「まいった。どうしよう!」


再び自転車を降り、歩道にうずくまるように倒れてしまいました。


軽井沢72ゴルフ場の緑が、徐々に夕焼けに染まりつつありました…。



途方に暮れて、またしばしじっと通り過ぎる車を眺めるしかない僕。

これはマジでヤバいぞ。
タクシーでも拾って下仁田まで戻る? いやいや、タクシー代が…。そもそもさっきからタクシーなんて通らんぞ…。こうなったらヒッチハイクか!?

なんだか訳の分からない思考が頭の中で堂々巡りを繰り返します。

この頃から空気が一気に冷えてきます。

妙義山を登っていた時は真夏のように暑くて冬装備で来たことを後悔していたというのに、今度は心の底から「厚着してきてよかった!」と思えるほど。
サイコンを確認すると、気温はなんと、一桁台に突入していたのです。寒いわけです。

気温の急低下が、山の恐ろしさを改めて実感させました。
こんな脚の状態で、自転車で下仁田まで帰れるのだろうか。。。




もうどうすることも出来ず、ズルズルと脚を引きずるように自転車を押して歩いていると…

視界の左側に、灯りのついたお洒落な建物が目に飛び込んできました。






DOG GARDEN RESORT」…

どうやらドッグカフェのようで、しかも、営業しているようです。

藁にもすがる想いで、フラフラとこのお店に飛び込みました。







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店内では3組の犬連れの人たちがくつろいでいて、みな、お洒落な小型犬を連れている女性ばかり。

そんな中、椅子に倒れ込むように座って必死で両足をマッサージする仮面ライダー。

みなさん、雰囲気壊してスミマセン(涙)。



ただ店内はストーブが炊かれていて暖かく、生き返る思いでした。

「とりあえず何か食べとこう」

もう暗くなるのは避けられません。
とりあえず何かを食べながら休み、脚の回復を図る道を選んだのです。










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【残念ながらラーメンライスはないので、お洒落なメニューの中から無難なカレーをチョイス。スパイシーなバターチキンカレーで、今まで食べたカレーの中で一番美味しく感じられました(笑)】








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【今まで飲んだ中で一番美味しく感じられたホットコーヒー】









やはりご飯を半分以上残してしまいましたが、スパイスの効いたカレーで体がずいぶん暖まりました。人間、やはり食事は大切ですね。

なんとなく察して下さったのか、店員さんもしきりに水を足しにきて下さって、ゴグゴク飲んでしまいました。人の情けが身にしみます…。


食後も両足のマッサージを続けていると、店内が暖かいこともあってか、かなり状態がよくなってきました。










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「よし、これならなんとかペダルを回せるかも…」

意を決して席を立ち、お勘定を済ませてお店の外に出ました。

もう辺りはすっかり薄暗く、気温もますます低下。
7℃まで下がっていました。

自転車にまたがり、恐る恐る走り始めます。

軽井沢インター方面に向かう道は、僅かな登り勾配。
ここで再び、太腿に違和感。
登りはやはりダメだな…。









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【ほどなくして現れたこの標識。右に曲がれば裏妙義を通って下仁田まで約26㎞。問題はその道が下りなのか、はたまた登り区間もあるのか】







標識の下で、真剣に悩みました。

軽井沢は高原地帯なので、下仁田まで下り基調なのは想像出来ました。
ただ、少しは回復したとはいえ、この脚の状態では少しでも登りが出現したらジ・エンド。
真っ暗な山の中で立ち往生してしまうことになります。

やはり軽井沢の街に戻って、どこかに一泊した方がいいのか…。

真剣に悩みました。

その間にも、辺りはどんどん暗くなっていきます。






「よし、行こう!!!!」





大げさかもしれませんが、一世一代の「賭け」でした。
こんな状況に陥ってしまったことを反省しつつも、もうこうなったら行けるところまで行くしかない、と開き直っていました。


なるべくペダルを踏まないようにしながら右折。


「頼む! 登りよ出てくるな…」

祈るような気持ちで、「決死のダウンヒル」はスタートしたのです。









それは、不思議な感覚でした。







下り始めた頃には、もう真っ暗。

全てを飲み込んでしまうかのような山の暗闇の中では、ライトの灯りなど焼け石に水。

スピードが出過ぎないようにブレーキをかけながらも、おそらく、小さな穴でもあれば即フっ飛んで落車、という状況の中、自分でも驚くほど集中力が高まっていたせいなのか、不思議な感覚が襲ってきたのです。





それはまるで、夜の空を飛んでいるかのような感覚でした。





ドマーネならではの下りの安定感…もあったかもしれません。
でも、それとは明らかに異質の感覚。
タイヤから確かに道路の振動は伝わってくるんですが、バイクを必死で押さえ込もうとしている自分を、翼が生えて空をトンでいる別の自分が冷静に眺めているような、そんな感覚なのです。

この時の感覚を、おそらく僕は一生忘れることはないと思います。

楽しい…とも違う。
怖い…とも違う。

ただ冷静に、夜の空を飛んでいるかのような感覚でした。










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幸いなことに登り区間はほんの少しも現れず、「奇跡のダウンヒル」は延々と続きました。

だんだん道の脇に民家が現れるようになってきて、車の量が増えてくると、ダウンヒルは終了。
それでも、緩やかな下り基調の道が続き、また、ダウンヒルで脚をまったく使わなかったことがよかったのか、脚も攣ることなくペダルを回すことが出来るようになっていました。

車とトラックに圧倒されながらも慎重に走り、最後の力を振り絞ってペダルを回します。

もしもここで脚が攣って倒れても、最悪は道端に民家がある…という安心感が、心を支えていました。


残り5㎞くらいに迫ったところだったでしょうか。
最後の最後にプチアクシデント発生。

なんと、段差や凸凹を通って自転車が揺れるたびに、フロントライトが消えかかるようになってしまったのです。
電池は換えたばかり。いわゆる接触不良のような状態です。

なんでこんな時に〜!!!!



走るほどにライトが力なく点滅するようになります。

あと少し、頼むから持ってくれ!

祈るような気持ちで、少しでもデポ地に近づこうとペダルを回しました。








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もうほとんどライトも消えかかっていた時、ついに道の駅「しもにた」の看板が現れました。
駐車場に滑り込み、自分の車を発見した時、何とも言えない安心感で体中の力が抜けていくのが分かりました。


「助かった…」


しかし、この日は最後の最後までダメダメです。

なんと車の室内灯を消し忘れていたのです(笑)。
おそらく、自転車を出す時に後ろ頭で押してしまっていたのでしょう。

なんとかエンジンは掛かり事無きを得ましたが、バッテリーが上がっていたら、ここでまたひと騒動でした。いやはや、ダメな時はとことんダメなものですね。思わず自分でも呆れてしまいました。




終わってみれば、たかだか80㎞ちょいの「ロング」とも言えないライド。

しかし、自分にとっては一生忘れられない、思い出深い一日となりました。



遊びなのであまり「反省」はしたくはないのですが、しかし、大いに反省せねばならないことがたくさんありました。
特に軽井沢からの、夜のダウンヒル。
もしもあの途中でパンクでもしたら…と思うと今でもゾっとしますが、無理なタイムスケジュールや補給のマズさなどが、あのダウンヒルにつながったわけで、本当に課題の多い一日となりました。

脚攣りにつながった、おばさま達にいいところを見せようとフミフミしてしまっためがね橋からの登りも、大きな反省点ですが…(笑)。








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【帰りの高速、SAで家族にお詫びのお土産を買って帰ったことは言うまでもありません】









「妙義山はやっぱり最高にカッコよかったし、碓氷峠の登りも素晴らしい景色だった。そして何より、あのダウンヒルは、本当に不思議な感覚だったな…。軽井沢の街は、またあらためてじっくり走ってみたいな〜」



夜の高速を飛ばしながら、今日のシーンを思い返し、やっぱり自転車は最高だな、と再確認したのでした。【完】









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えっ、新調したデュラのペダルはどうだったかって…!?






はい、それどころじゃありませんでしたーーーーーー(爆)。

(でも、クリートがハマる音がパチンと甲高くなったのと、回りが軽くなったような感覚は確かにありましたよ/笑)












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by pcblue | 2013-11-05 23:02 | ヒルクライム | Comments(8)
Commented by 船乗り at 2013-11-05 23:32 x
こんにちは。
お疲れ様でした(-.-)
私も似たような経験があるので、かなり共感を持って拝見させて
頂きました。
まぁしかし、めがね橋のおば様達の件は不可抗力かと(笑)
これからも記事を楽しみにしています。
Commented by 来年はアドワン乗りのけんけん at 2013-11-05 23:34 x
今晩は、軽井沢ライド本当にお疲れ様でした。しかし写真と同じく文章力がありますね。(^_^)v読んでいて光景がスーと頭に浮かびます。ところで本当に水分と食事補給は大切ですね。南軽井沢の焼肉屋さんはランチで入った事があります。軽井沢の常宿がすぐ近くなんです。お互いに一年でも長くロードバイク人生が送れるよう健康には留意しましょう。(^_^)v
Commented by トミー at 2013-11-05 23:44 x
お疲れ様でした〜!いや〜、平和に見える日常に
危険が潜んでますよね〜 僕も前述の経験をした
時は時折通り過ぎる軽トラに人生初のヒッチハイクか⁉︎
って半分本気で思いましたもん。クリートの歩き辛さも
実感したため、以来(気休めですが)クリートカバーも
ポッケに入れてます。
僕もブログやりたいんですがpcblueさんみたいに
記事書けそうにないな〜
Commented by pcblue at 2013-11-06 10:17
♪船乗りさん♪
コメントありがとうございます。
共感して頂けたなんて、なんか嬉しいです。補給失敗&脚攣りがこんなに苦しく痛いものだとは知らなかったです。参りました。

なぜか昔からおばさま達(それもかなり上)にモテるんですよね〜。同年代以下はからっきし。カミさんも5つも上だし(爆)。
そんな自分が、今や4人の女性と同居してるんですから人生分かりません。
Commented by pcblue at 2013-11-06 10:20
♪けんけんさん♪
はい、疲れました(笑)。
本当に、あの暗闇のダウンヒル体験は一生忘れられないと思います。地面が見えないせいか、空を飛んでるようで…。
軽井沢は好きな場所で、僕も以前からよく訪れていますが、自転車では初めてでした。あの焼肉屋さんご存知なんですね。けっこう目立つ建物ですし、僕も以前から知ってはいたんですが、まさかそのお店の前で自分がうずくまるとは思ってもみませんでした。。。
今度はぜひ、余裕をもった計画で北軽井沢にも上がってみたいです。
Commented by pcblue at 2013-11-06 10:24
♪トミーさん♪
ただ補給失敗して脚を攣った記事でこんなに引っ張ってしまってスミマセンでした。。。 ヒッチハイク、僕もマジで考えましたよ。でも、行き交う車がベンツやBMWばっかり(しかもカップルだらけ)で…。もしも気さくそうなおっちゃんが乗った軽トラが通ったら、声をかけていたかもしれません(苦笑)。
ブログ、ぜひやってみて下さいよ〜。自己満足ですが、僕自身もこうして大好きな自転車を通してささやかなつながりも出来て、とても幸せです。
Commented by だんごや at 2013-11-24 18:55 x
はじめまして。とてもおもしろい日記で惹きつけられました。足が攣るのは嫌だけど(笑)不思議な感覚を自分も経験してみたい。まさに冒険ですね
Commented by pcblue at 2013-11-24 19:40
♪だんごやさん♪
コメントありがとうございます!
あの夜のダウンヒルは、今思い返しても、とても不思議な体験でした。また真っ暗闇の中で山を下ろうとは思いませんが(苦笑)。たぶん、集中力が自分でも考えられないくらい高まっていたんだと思います。

また気軽に当ブログにお越し下さいね。
基本的にはゆる〜いブログですが。。。
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